補聴分野の基本用語集「裸耳」「ファンクショナルゲイン」
日本聴覚医学会 補聴分野に参加する前に確認したい基本用語集
本年度は当社の地元、名古屋で開催される
「第65回 日本聴覚医学会 総会・学術講演会」
講演会は2020/10/8~9に開催となりました。
医学会なので、講演会では専門用語が多数飛び交うのですが、
当社が関係する”補聴”の分野に絞って、代表的な用語を参考で記載したいと思います。
聴覚閾値 読み : ちょうかくいきち
threshold of hearing
オージオグラム等の測定において、聞こえる最小の音圧レベル(聞こえる限界の値)となります。
業界内では、省略して”閾値”だけで表現する場合もあります。
裸耳 読み : らじ
open ear
耳になにも装着しない状態
利得<ゲイン> 読み : りとく
gain
電子回路において、入力と出力の比を表します。
利得<ゲイン>が大きい→音を大きくする能力が高いと言えます。
裸耳利得 <オープンイヤーゲイン> 読み : らじりとく
open ear gain
耳の穴から鼓膜に至る外耳道(耳掃除する穴)には、共鳴により特定の周波数の音を
増幅する作用が働きます。
音が鼓膜に届くまでにどれだけ増幅されて届くかが裸耳利得となります。
例えば3000Hzで耳の外から50dBの音圧を入力したときに、鼓膜上で60dBの音圧が測定されれば10dBの利得があることになります。
補聴器を装用すると、この利得(ゲイン)は失われてしまいます。
装用利得 <インサイチュゲイン> 読み : そうようりとく
in situ gain
補聴器を付けた状態で、音が鼓膜に届くまでにどれだけ増幅されて届くかが装用利得となります。
例えば3000Hzで耳の外から50dBの音圧を入力したときに、鼓膜上で80dBの音圧が測定されれば30dBの利得があることになります。
挿入利得 <インサーションゲイン> 読み : そうにゅうりとく
insertion gain
挿入利得 = 装用利得 - 裸耳利得
上記の場合を例にすると、裸耳で10dBの利得がありました。
補聴器を装用すると、30dBの利得がありました。
結果として、補聴器を付けたことにより、付けない時と比べ
30 - 10 = 20dB の利得が得られました。
これを挿入利得といいます。
実耳挿入利得(じつじそうにゅうりとく)ともいいます。
裸耳利得、装用利得、挿入利得は鼓膜面上の音圧を測定する必要がありますので、
耳の穴(外耳道)に細いプローブチューブを差し込んで音圧を測定します。
測定に手間と時間がかかるため、日本ではあまり普及していません。
ファンクショナルゲイン
functional gain
補聴器を付けて聞こえた限界の音(装用閾値)から付けない時に聞こえた限界の音(裸耳閾値)を引いた差となります。
ファンクションは機能の意味。ファンクショナルゲインは補聴器の機能によって得られるゲイン(利得)を指しています。
補聴器を付けてどれだけ聞こえが改善されたかがこの値で判断できます。
上記のグラフでは1000Hzの時、装用閾値60dB、裸耳閾値80dBにて
その差の20dBがファンクショナルゲインになります。
先ほどの挿入利得との違いはなんでしょう。
挿入利得では、プローブチューブを用い、測定器で音圧を測定していますが、ファンクショナルゲインでは、発した音が聞こえる/聞こえない(閾値)という被測定者による回答となっています。
ISTS 読み : アイエスティーエス
国際音声試験信号
補聴器の試験のための疑似的な音声信号。
欧州補聴器製造業者協会(EHIMA)よりwavファイルがフリーで提供されています。
Documents → Technical Documents
・International Speech Test Signal 16 and 24 bit
どのような音声かは、上記サイトからダウンロードして聞いてもらえばわかります。
LTASS 読み : エルタス
Long term average speech spectrum
長時間平均音声スペクトル
1/3 オクターブバンドで測定した音声の音圧レベルを,長時間にわたり平均化したもの。
(JIS C 5516より)
パーセンタイル音圧レベル
30%パーセンタイル音圧レベルは、測定した音圧レベルの30%がその音圧レベルを下回り、残りの70%はその音圧レベルを上回る。
99%パーセンタイルは音圧レベルのピーク値を示すと解釈できる。
(JIS C 5516より)
HATS 読み : ハッツ
Head And Torso Simulator
単純に訳すと、頭と胴のシュミレーター。
ダミーヘッドとして、補聴器では音響計測用として使用されます。
以上、いかがでしたでしょうか。
ファンクショナルゲインで使用したグラフはExcelで作成したもので、
元のデータは本サイト内でも公開しています。
よろしければぜひこちらもご活用ください。
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