魅力的な音の秘密 澄み切った優しい音 真空管アンプ
不快な音を軽減している?真空管アンプが選ばれる理由
デパートや大きなお店などへ行った際に、電化製品や楽器の展示があるとつい買う予定は無くても引き寄せられてしまうという方がいらっしゃるかもしれません。私もその一人です。
弊社では集音器を開発・販売を行っていますが、ヘッドホン型集音器「フォンテック」は店頭での展示を各販売店にて行っています。展示繋がりで最近、筆者がみかけて気になったのが真空管アンプです。
真空管アンプとは、真空管を使用して音を増幅させる回路(アンプ)を組み、スピーカを動かす装置のことです。
先日、出先の東急ハンズで真空管アンプをみかけました。展示してあるそこには”澄み切った優しい音がながれます。”と宣伝文句が記載されていました。耳をスピーカに近づけ雑踏の中で音に集中すると、クラシックメロディーが私の耳には心地よいやさしさできこえてきました。
静かな部屋でじっくり鑑賞できたわけではないからか、すごい!の表現までにはいきませんがそれでもいい音でした。
しかし今時、真空管を使うなんてなぜだろう?、今でも生産してるの?、寿命が来たら交換可能なの?値札にはそれなりの高価でマニア向け? などと色々疑問がわいてきます。
新しい情報と忘れた勉学を思い出すために真空管アンプについて調べてみました。
今の時代、デジタル全盛といわれている中でなぜあえて真空管を使うのか。アンプのスペック進化の歴史を振り返ってみても真空管は過去の技術といえるのではないでしょうか。しかし、そんな現代でも東欧やロシア、中国では今も生産が続いており、オーディオの世界では有る分野を確立しています。真空管とその他の生み出された技術では電子工学的に比較するとすぐに優劣はついてしまうでしょう。それでも選ばれる理由が真空管にはあるようです。
人間の耳というものは不思議なものです。デジタル技術の粋を凝らした最新のアンプより昔ながらの真空管アンプの方が良い音がするという人が多いのも事実です。これは聞く音楽の分野に大きく関係するため何とも言えませんが、人の声やアコースティックな楽器には真空管アンプは合っています。音をよく知っている楽器の演奏家は、真空管アンプを所有し、よく聴いているそうです。また、意外かもしれませんがエレキギターのアンプはほとんど真空管を使用しています。ライブなどでエレキギターの演奏を聞いたことが有る方であれば、真空管アンプで再生されたエレキギターの音はびっくりするほど生々しく感じると思います。最近のデジタルソースの再生には真空管アンプのアナログ感が非常にマッチして、刺々しさがなくなり非常に耳に優しくなると思います。
楽器や人の声に限らず、自然には様々な音があります。風の音や水の流れる音、車やサイレンの音など、私たちの生活は音であふれています。このような音には「倍音」という成分が含まれています。音には決まった周波数がありますが、基本となる周波数の他にその2倍、3倍,という整数倍の周波数による振動がいくつも発生しています。この整数倍の振動が出す音のことを「倍音」と言います。ヴァイオリンはヴァイオリンの音色、サックスはサックスの音色と判別できるのは、この「倍音」が含まれているためです。
音響機器の世界では「倍音」のことを「高調波歪み」と称しています。アンプで再生する音にも、高調波が含まれています。元々の周波数を基本波と言いますが、この基本波の偶数倍の周波数をもつものが「偶数次高調波歪み」、奇数倍の周波数を持つものが「奇数次高調波歪み」になります。「偶数次高調波歪み」は基本波とオクターブ関係にあり、聴感的に心地よい響きを与えます。一方「奇数次高調波歪み」は遥か高域まで徐々に弱まりながら出続け歪として耳につきやすく不快音として感じられます。
真空管はその伝達特性上、歪みとして耳につきやすい奇数次の高調波が少ない素子です。真空管で作られた回路は「奇数次高調波歪み」を打ち消し「偶数次高調波歪み」を強調するように働きます。「偶数次高調波歪み」はもともと楽器の音にも豊富に含まれる「倍音」の成分なので豊かな音に感じられるのです。反面「奇数次高調波歪み」が少ないことにより、不快で聴き疲れする音が少ないことになります。真空管アンプはこのような特性により、自然界の音、本物の音により近い音を発生することができます。
一方、トランジスタなどの半導体アンプは一般に奇数歪みが多いといわれています。従って、歪み始めるといきなり「音が割れる」という感じになってしまいます。また、歪みそのものを全て削減しようとするため、本来、自然な音が持っている「倍音」の成分までも消し去ってしまう方向にあります。
このように「奇数次高調波歪み」が少なく自然の音にもともと含まれる「倍音」の成分が多いのが真空管アンプの音の特徴です。「優しく」「暖かい」「リアルな」など感覚的に表現されることが多い真空管アンプですが、その理由は音の成分にあったのです。同じ価格帯の半導体アンプをブラインドテスト(A,B 2つの製品をランダムに変えながら、差が検知出来るかどうかのみを答えてもらう方法)した場合、差は検出できなかったが、真空管アンプと半導体アンプのブラインドテストでは有意差が検出されたという実験結果も報告されています。真空管アンプはイメージや先入観ではなく半導体アンプとは聴き分けられるものなのです
以上のことから簡単にまとめますと
- 真空管は今でも生産されている
- 真空管の特性の一つに不快と感じる奇数次の高調波が少ない
- 今でもライブ会場では当たり前に使われている
真空管の特性がアンプに良いことはわかりました。
最後に、寿命と価格についてですがこれも調べてみると寿命は1日2時間使用を想定した場合、7年程度とありました。(あくまでも一般的参考情報です)
あとは、真空管には定期的にメンテナンスが必要のようで基本は汚れ落としです。メンテナンスを行っていても寿命で壊れてしまった場合は交換となります。そこで価格を調べると、自分の想定とは違い意外と安価なことに驚きました。真空管単体もそうですが、アンプも安価な製品から逸品ものまでいろいろでした。
これで筆者の疑問はひとまず解決できました。真空管の特性はアンプによく合っていて単体も製造は続いておりコストも抑えられています。やさしい聴き心地を届けられるアンプができるのなら、真空管を小さくして常に直接装着していれば聞き取る音から雑音が消え人の心は更に安らぎ、心が優しくなるのではないかと思いました。心安らげば他人に対しても優しくなってくれると思いますが(いろんな意味合いで)。真空管アンプは目的によっては、物理的に可能なら小さくなればいいと思う今日この頃です。
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