耳以外で音を聴く 人間とイルカ 聴き方の違い
イルカは耳ではなく実は骨で音を聞いていた
イルカは耳がないのに音がきこえる
水族館などで行われるイルカショーでもお馴染み、とても賢い動物としても知られるイルカですが、彼らはどうやって音を聞いているのか皆さん知っていますか?
まず彼らの見た目を思い浮かべてみてください。水中を泳ぐ生き物の多くがヒレやエラを持っていると思いますが陸上の動物と比べると流線的な体のラインをしているのではないでしょうか。これは生き物の進化の過程で水の抵抗を受けないよう変化したものだと言われています。カエルの子どものオタマジャクシの成長とは逆の進化ですね。
人間と同じ哺乳類であるイルカにも私たちと同様に音を聞くための器官があります。人間でいうとその器官は耳になるのですが、イルカには私たちのように出っ張った耳はありません。彼らの場合は進化の過程で人間でいう耳介部分は消失したといわれていますが、目の後ろあたりをよくみると小さな点状の穴のようなものがあり、この部分が耳のあったなごりだそうです。しかし穴は完全に塞がっていて人間の耳のような音の伝達経路としての機能はありません。
音を聴きとるイルカの器官
では、イルカはどこから音を聞いているのでしょうか?
実はイルカは下顎から水中の音を聴き取っています。彼らの下顎の両側面の内部には音響脂肪があり、この脂肪を音波がつたい水中からの音が鼓膜へ伝達しています。これとは少し異なりますが、人間も耳介からの伝達ではなく”骨伝導”によって音を聴くことが出来ます。(骨伝導について詳しくは下記のリンクからご覧いただけます。)
集音器と骨伝導の仕組みについて
さて、イルカの体内では下顎から鼓膜へ伝わった音の振動が骨をつたい、さらに内耳へ伝えます。この鼓膜から内耳にかけての伝達において、人間の場合は空気の振動をリンパ液の振動に変えるための過程があるのですが、イルカの場合は水中の音を聴いているのでその過程は必要なく、耳小骨から振動をそのまま内耳へ伝えます。イルカは、内耳の構造が人間によく似ているそうです。
前庭膜は蝸牛殻につながっていてこの中には基底膜が渦を巻いて収まっています。伝わってきた音波はここで周波数分析され、有毛細胞で神経インパルスに変換されます。
人間が聞き取ることの出来る周波数は20Hz~20,000Hz(20kHz)と言われていますが、イルカなどのソナーを使うハクジラ類は、数10kHzで最も聴覚感度がよく、100kHzを越えてもまだ聴こえるそうです。
一部引用先:2007年バイオメカニズム学会誌「イルカのハイパーセンサ」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/31/3/31_3_134/_article/-char/ja/)
現代の医療では様々な動物たちの生態からヒントを得て、発展した技術も数多くあります。最近ではニワトリやカエルの生態を調べた結果、人間の耳にある有毛細胞は一度損傷すると元には戻らないという常識が変わるかもしれないという可能性がみえてきたそうです。下記の再生医療に関する記事からぜひご覧ください。
イルカのようには難しいかもしれませんが、耳に異常を抱え聞こえに悩まれている方々にとってさらに役に立つ医療技術が遠くない未来で実現されるのではないかと思ってます。
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